
ここに書いてあること
キャンシーなどのNアセチルカルノシン目薬が、どのように犬などの白内障の改善に効果を表すのかを説明しています。今回は、「なぜ、Nアセチルカルノシンが効果があるのか?」について、書いています。
L-カルノシンが白内障を予防、改善させる! が、問題が…
ます、最初に、NAC目薬において、犬やヒトの白内障の予防や改善に直接、効果をもたらすのは、L-カルノシンであって、Nアセチルカルノシンではありません。N−アセチルカルノシンそれ自体は、非常に弱い抗酸化剤でしかありません。
L-カルノシンは、
「反応性酸素種や過酸化脂質により生じる酸化的損傷(つまり白内障)」に対して抗酸化剤としての機能を有していて、
それが行われるのは、
- 細胞脂肪相及び生物膜組織
- 脂肪を保護する水性環境
- 蛋白質(酵素を含む)DNA及びその他の必須高分子などの水溶性分子
という場所でも可能である、ということです。
それでは、L-カルノシンを、何らかの形で目に投与すればいいということなのですが、そんな簡単ではありません。L-カルノシンには次のような問題があります。
- 眼に局所的に投与した場合、カルノシンは組織内に蓄積せず、尿とともに排泄される
- (血漿、前眼房の眼房水、肝臓、腎臓、及びその他の組織に存在しているが)筋肉においては存在しない酵素カルノシナーゼにより好ましく破壊される。
つまり、L-カルノシンを投与しても、肝心の患部(この場合、水晶体)にうまく届けられない、ということなのです。
NACを、眼内でLカルノシンに変えている
これを解決するために、プロドラッグ※としての、Nアセチルカルノシンに注目されました。N−アセチルカルノシンはL−カルノシンのプロドラッグであることが開示されていたので、マーク・バビザエフ氏は、これを応用することにしたのです。
※プロドラッグ(prodrug)… 体内あるいは目標部位に到達してから薬理活性をもつ化合物に変換され、薬理効果を発揮(活性化)するように化学的に修飾された薬。(日本薬学会の薬学用語解説)
マーク・バビザエフ氏は、眼の結膜嚢内にN−アセチルカルノシン化合物を局所的に投与するにあたり、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース化合物を存在させることで、N−アセチルカルノシンのL−カルノシンへの生体内変換または新陳代謝が高められることを発見したのです。
N−アセチルカルノシンは、角膜を通じてその眼房水内へと通過する間に、L−カルノシンへと変換されるのですが、これを効率よく行わせるようにできたのが、キャンシーということのようです。
(参考)公開特許公報(A)_治療手段 2010233468、眼疾患の局所的治療方法、並びに、その治療用組成物及び治療用手段 JP2006504701A
マーク・バビザエフ氏の発明は、このセルロース化合物をNアセチルカルノシンと共存させることですが、これが発見されなかったら、キャンシーの商品化はなしえなかったということなのです。