
ここに書いてあること
犬が白内障を起こした場合、最終手段として、犬白内障手術さえすれば、どんなものも元通りにしてくれる、と思っている人も少なくないですが、実際はそうではありません。そのあたりのところを記事にしています。すでの同じような内容を記事にしていますが、もう少し詳しめに解説しています。
すべての患者に犬白内障手術を適用できるわけではない
飼い主さんが、愛犬の白内障手術を希望されて来院されても、実際は、その、約2割程度しか、施術に至らないそうです。犬白内障手術自体が非常にデリケートなものであるし、術前術後の患者の管理が手術の成功の具合に大きくかかわってくるほか、患者が次項に述べるような状況にある場合には、手術ができない、そうです。
※(参考) JVM Vol.55 No.4,2002 私の診療シリーズ、小動物の眼科診療13 白内障Ⅱ 太田充治氏
白内障手術適応外となる場合
以下に、白内障手術適応外となる場合を表にしました。太田充治氏の文献を参照しています。
眼疾患以外 | ・患者の性格に問題がある場合 ・飼い主の性格に問題がある場合 ・全身状態に問題がある場合 - 全身麻酔に対する危険が大きいもの - 全身性疾患を持つもの ・老齢,重度の肝・腎疾患 |
ぶどう膜炎 | ・活動期のぶどう膜炎 - 術中・術後の合併症の発生率が増加する。 ・水晶体過敏性眼内炎 - 過熱白内障,膨脹白内障の場合は注意して観察する ・陳旧化したぶどう膜炎でも、虹彩後癒着の激しいもの - 手術操作が困難で,術後合併症の発生率も増加する |
網膜疾患 | ・突発性後天性網膜変性症候群(SARDS) - 眼底検査は初期では正常で, ERG 検査によって確認する。 ・進行性網膜変性症(PRD) -Ⅰ型(遺伝性進行性夜盲):眼底検査で診断し、 SERG 検査にて重症度を確認する。 - Ⅱ日型(網膜色素上皮ジストロフィー):眼底検査で診断するが,ERG検査では異常を示さない。 ・コリー眼異常(CEA)あるいはシェルティー眼異常 (SEA) 一眼底検査で診断可能であるが、グレードが低い場合は視力障害を示すことは少ない。 |
Non-recordable ERG あるいはNegative ERG | ・b/a比から Negative ERG と判断されたものでもっa波振幅がかなり低下しているものは手術適応外とする。 |
その他 | ・網膜剥離 ・眼球癆 ・第一次硝子体過形成遺残(PHPV) - PEA, ECCE, ICCE のいずれの方法でも混濁は完全には取りきれず,術中・術後に重篤な合併症を引き起こす可能性がある |
※(参考) JVM Vol.55 No.4,2002 私の診療シリーズ、小動物の眼科診療13 白内障Ⅱ 太田充治氏
愛犬の健康管理は重要!
上記の表で、犬ではなく、「飼い主の性格に問題がある場合」も、白内障手術適応外となる場合に含まれていて興味深いです。ほとんどの犬が、白内障手術を受けられると思っていましたが、約2割しか、手術を受けられないとは意外でした。やはり、健康でないと、白内障手術を受けるのも難しいのですね。