
ここに書いてあること
犬が白内障になった場合、動物病院で行う治療の一つ、「外科的治療」について書いています。
犬白内障の外科的治療とは?
外科的治療とは、手術による水晶体の除去と眼内レンズの挿入です。太田充治氏によれば、犬白内障の外科的治療について、以下の記載があります。
- すべての白内障患者(犬)にこの治療 が適用できるわけではない。
- 非常にデリケートな手術であり、術前術後の管理が手術の成功に大きく関係してくる
- 白内障のタイプのみならず、動物の性格基礎疾患の有無、飼い主の性格、几帳面さまで問題となることもある。
- 白内障の手術を希望されて来院する動物で手術まで漕ぎ着けるのはそのうちの約2割。
- 白内障のタイプにより手術の方法を 選択する必要があ、術中の状態によって途中から手術法を変えなければならないこともある。
手法 | 概要 |
(1) 超音波乳化吸引法 (phacoermulsification and aspi. ration:PEA) | 現在の白内障手術の主流で、著者の白内障手術のほぼ8割以上 はこの方法で行う。 直径3mmほどの超音波チップの先端を前房内に挿入し、 水晶 体を超音波で破砕しながら吸引していく。 本法の最大の利点は角膜切開の大きさがわずか3mm程度で済 むということで、これは 術中の眼内感染を防ぎ,手術時間を 短縮させることができる。 |
(2)嚢外法 (extracapsular cataract extraction: ECCE) | 古くから用いられてきた白内障手術の基本手技である。 最近 は PEA の獣医眼科領域での普及に伴って、この手術 を第一 選択することはかなり少なくなったが、前述のよう 中のトラブルに対処するためにはこの基本手技をいつでも行 うことができるようにトレーニングしておく必要が ある。 |
(3)嚢内法 (intracapsular cataract extraction: ICCE) | 水晶体をその嚢ごと娩出する手技で,水晶体の前房内脱臼の時 やチン氏帯の断裂が比較的広範囲であると考えられた時、つ まり水晶体のズレが著しい時は本法を選択する。白 内部の治 療としても行われるが,水晶体脱臼時の緑内障の予防および治 療として行われることが多い。 この手術は非常に合併症の発生する危険性の高く、何故なら 水晶体後嚢には硝子体膜が付着しており, ICCEの操作中に程度 の差はあるもののほぼ全例において検出された水晶体に引っ 張られて硝子体が脱出するからである。 |
(4) 注射針による 水晶体皮質の吸引 | 白内障が液状の場合,あるいは過熱白内障でモルガーニ白内障 となった場合には液状化した水晶体物質を注射針によって吸 引して視覚を回復させることができる。 特別な器具を必要とせず短時間でできる処置であるが, 水晶 体が液状化していることを診断する経験が要求される。 |
(参考)JVM Vol.55 No.4,2002 私の診療シリーズ、小動物の眼科診療13 白内障Ⅱ 太田充治氏