
ここに書いてあること
犬が白内障になった場合、動物病院では、具体的にどのような治療を行うのでしょうか?今回は、そのうちの一つ、「内科的治療」について書いています。
治療方法は大きく2つ
犬の白内障の治療を行う場合、以下の2つの方法があります。
- 内科的治療
- 外科的治療
今回は、1の内科的治療について解説しています。
犬白内障の内科的治療とは?
太田充治氏によれば、犬白内障の内科的治療について、以下の記載があります。
点眼薬による治療 | ・現在、動物用医薬品として国内で白内障に対して認可されて いる製剤はピレノキシン(ライトクリーン:千寿製薬)のみである。 ・点眼薬による治療は予防的治療として考え、発達した白内障 の混濁を減少させるというわけではなく、飼い主も気が付か ない程度の老年性の初発白内障で視覚の障害がほとんど認めら れない時期に獣医師が検診により早期に発見し、その進行を 防止することを目的とすべきであると考え る。 ・その他の場合でこの点眼薬による治療を選択するのは, 高齢で手術が受けられない場合などや、手術を行うことによる メリットがそのリスクを下回ると思われる時である。 高齢になると水晶体は硬度を増し、超音波による乳化吸引が 困難になってくるので,日常生活に支障をきたすほどの視覚 障害がなければ点眼薬によってその進行を遅らせる治療を 選択することが多くなってくる。 |
注射による治療 | ・鉤虫駆虫薬であるジソフェノールを皮下投与するという 方法である。 ・この治療法は十数年ほど前に若齢のシベリアンハスキーに 多くみられた白内障に対して用いられ,良好な結果が得ら れた。当時はトピックス的に扱われ、白内障のタイ プに 関係なく用いられていたが,必ずしもすべての白内障に効果 があるものではないことが分かった。 ・著者らの治験によると、この治療法の適応となる白内障は, ①若齢の (ほとんどは2歳齢以下), ②急速に発達する, ③しばしば 前部ぶどう膜炎を合併する, ④核を中心とした白内障 であることが分かった。 ・著者はこれまで上記のようなタイプの 白内障を呈した犬 (ハスキー, シバ, ミニチュアシュナウ ザー,キャバリア・ キングチャールズスパニエル,チベ タン・テリアなど)、 猫(アメリカンショートヘア、在来種), アライグマに おいてこの注射による治療を試みて視覚の回復を得るまで の良好な成績を得ている。 |
(参考)JVM Vol.55 No.4,2002 私の診療シリーズ、小動物の眼科診療13 白内障Ⅱ 太田充治氏
上記の表の内容を抜粋すると、点眼薬による治療は、
- 点眼薬による治療は予防的治療として考える
- 発達した白内障の混濁を減少させるというわけではない
また、注射による治療は、
- 眼底は観察可能になるものの手術ほどの効果はない
- 著者はこの治療法を積極的に選択するという ことはない
となっていて、つまり、これらの「内科的治療」は、治療方法としては限定的である可能性が高い、との記載になっています。
上記の表の中には、2002年当時のものであるためか、まだ、Nアセチルカルノシン目薬についての内容は触れられていません。