
ここに書いてあること
犬の白内障の場合には、ほとんど取り上げられることはないと思いますが、ヒトの白内障に効くということで、漢方薬の八味地黄丸というものがあります。これは内服薬です。これについて記事にしています。
八味地黄丸とは何か?
八味地黄丸は漢方薬の一つで、あのツムラのサイト情報によれば以下のような説明があります。
- 8種類の生薬の、地黄(ジオウ)、 山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、附子末(ブシマツ)を調合。
- 「腎」の働きが衰えた高齢者に元気をつける
- 高齢者によく用いられる
- 体力があまりなく、疲労や倦怠感が激しく、寒がりで特に手足や腰から下が冷え、夜間にトイレへ行くことが多いような人、のどが渇く人に。
- 冷えにともなう痛みを体を温めて取る
- 冷えにより痛みを取るのによく用いられる「附子剤」の一つ
- 体を温め、中高年によくみられる足腰などの慢性的な痛みやしびれの改善をはかる。
- 高血圧の症状(肩こり、頭重、耳鳴り)などにも使われる。
八味地黄丸などというと、怪しい、インチキ薬かと思いきや、ツムラ、クラシエ、DHCの大手の会社も手掛けるような、知られた漢方薬のようです。
意外にもトンデモ扱いになっていない!論文にも掲載あり
白内障にも触れた八味地黄丸を取り扱った論文を調べてみると、意外にもいくつもの論文があります。たとえば、以下のものがあります。
- 岡美佳子, 長井紀章, 日本白内障学会誌 29:48〜49,2017, 白内障への薬学的アプローチ
- 藤平健,日東医誌 24, 465-479, 1974,八味丸による老人性白内障の治療
- 高島琴子,漢方医学 4(8), 17-19, 1980,八味地黄丸による老人性白内障の治療
- 小島正美,第39回日本臨床眼科学会総会抄録, 1985, 実験白内障に対する八味地黄丸の薬効の検討
- 小倉重成,臨眼 11, 259-263, 1957,東洋医学による白内障治療経験
- 藤平健,第38回日本東洋医学会総会抄録, 1987, 老人性白内障の漢方による治療
これらの論文にあるように、現状はわかりませんが、過去にはちゃんと検討されてきた薬の一つのようです。つまり、白内障に効果が出たケースもあったということです。
有効性は明らかではない
しかしながら、「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」によれば、
「白内障の薬物療法: 内服(国内認可薬物) のうち、漢方薬は、八味地黄丸、牛車腎気丸に適応があるが、ランダム化比較試験はなく、有効性が明らかではない」ことから「漢方薬は、白内障に対する効果に科学的根拠が無いので、一般的な使用は勧められない」
という見解を発表しています。
※「適応」とは「その治療を行うことで患者にとってメリットのある状況」
というわけで、八味地黄丸は、犬の白内障に対して効果が期待できなさそうです。