
ここに書いてあること
犬の白内障の種類について解説します。今回は、2回目で、発生部位による分類をご紹介します。
発生部位による分類とは?
犬の白内障を分類する場合、次のような観点で区分が行われます。※
- 発症年齢による分類
- 発生部位による分類
- 混濁の程度による分類
- 原因による分類
※(参考) JVM Vol.55 No.3,2002 私の診療シリーズ、小動物の眼科診療12 白内障Ⅰ 太田充治氏
本記事では、2の「発生部位による分類」について、解説します。
発生部位による分類
発生部位 による分類 | |
嚢白内障 | 水晶体を包んでいる嚢に生じる白内障。この部位のみに混濁がみられることは比較的少なく、 嚢下や皮質 などの部位にも同時に混濁が現れることが多い。外傷などによる嚢の破裂や穿孔、 瞳孔膜遺残などが原因になると前に、硝子体血管の異常(第1次硝子体過形成遺残: PHPV など)では後黄に混濁が生じる。 |
嚢下白内障 | 前嚢または後葉の直下(内側)にみられる白内障。水晶体上皮細胞の増殖性変化や先天的な発生異常に よって生じ る。コッカースパニエル(前極),ミニチュアシュナウザー やビーグルなど(後極では 遺伝性嚢下白内障が報告されている。 |
皮質白内障 | 水晶体皮質(裏と核の間)にみられる白内障。犬ではこの 白内障が多く,混濁のある皮質の部位で さらに前皮質,後 皮質、赤道部に分類される。初期には赤道部皮質に楔状,車状あるいは水泡状 といった形態で現れ,前およ び後皮質に広がっていくことが多く、特に老年白内障では その進行が 比較的緩徐であるので、混濁の進行をよく観察 することができる。アメリカン・コッカースパニエル, ミニチュアプードル、 ゴールデンレトリバーなどでは遺伝性の皮質白内障が報 告されている。 |
核白内障 | 水晶体の中心部にある核の部分に生じる白内障。若年白内障の多くは、この核白内障が中心であることが多い。 また90年代前半によくみられた所謂「ハス キー白内障」というのもこの白内障であり、 ぶどう膜炎を 伴うことが多いのも特徴であった。 ボストンテリアやオー ルドイングリッシュ・シープドッグなどでは遺伝性の核 白内障が 報告されているが、これらはしばしば皮質白内障も併発していることが多い。 |
「皮質および核白内障は手術によってほぼすべて除去する ことができるが,一部の核白内障では注射によって混濁を 吸収できることもある(後述)。嚢に発生した白内障は特に 後嚢では完全に除去しようとすると後嚢破損の恐れがある ので、術中深追いはできず,術後も若干混満が残ることが 多い。また点眼療法によってその進行が抑えられるのは老年生の皮質白内障である。
※(参考) JVM Vol.55 No.3,2002 私の診療シリーズ、小動物の眼科診療12 白内障Ⅰ 太田充治氏